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更新日:2018年6月15日

寸松堂

第4号/平成4年2月1日指定

寸松堂この建物は、昭和11年、鎌倉彫の彫師佐藤宗岳氏の店舗併用住宅として、市内の大工西井喜一、正二親子によって建てられました。1階店舗部分のガラス 戸、ショーウインドーなどに近代洋風建築技術が見られますが、全体としては寺院建築と城郭建築が合体したような建物となってます。寸松堂は建築当初から 笹目町、長谷界隈のランドマークとして重要な役割を果たしています。

 

所在地:笹目町

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構造規模:

  • 木造2階建、搭屋付、和小屋組
  • 延べ床面積/421.22平方メートル
  • 屋根/銅板瓦棒葺き、一部亜鉛引鉄板葺き及び桟瓦葺き
  • 外壁/漆喰塗り大壁、一部押縁下見板張り


建物の沿革

昭和11年に神奈川県に提出された建築届出書によると、昭和11年9月1日起工、 同年12月25日竣工ということが確認できる。

これによると建築主は佐藤憲、建築設計者・工事請負人・工事管理者とも西井喜一とある。 もちろん、創建当初から鎌倉彫の商店兼住宅「寸松堂」であった。 創建後の改変については、昭和20年代後半に1階東南隅のショーウィンドウを拡張し、 これにあわせ北側の出入口を少し東側へ拡張した。

昭和40年頃に、2階階段の北側の露台であった部分を室内に取り込む改修、 昭和49年頃には北西隅の台所・浴室・便所部分の増築及び内部の改装が行われた。

上記の部分以外においても当初の図面と異なる部分が数箇所あるが建築物の状況、 所有者の記憶等からこれらの部分は当初から現状のままであり、 施工の際に計画が変更されたものと思われる。

この様に寸松堂の建物は、1階北西隅の台所・浴室・便所部分の増改築、 東南隅ショーウィンドウの改築、2階台所の増築を除けば、 さしたる改変を受けず、ほとんど昭和11年の創建当初のままということができる。

建物の特徴

寸松堂の建築的特徴は、3階建ての塔に代表される特異な外観にある。

この塔は頂部に相輪を戴き、二・三重の軒は二軒の繁垂木(しげたるき)を用い、三斗の出組、花肘木、蟇股(かえるまた)といった細部意匠が見られるなど、まるで寺院建築の塔婆を思わせる。

しかし、窓は城郭建築に見られる武者窓であり、 寺院建築と城郭建築が町屋と合体したような建物と言える。

また、構造もかなり複雑で、1・2階を通した柱が少なく、軸組みが容易に重ならない。

極端に言えば、各階が下の階全体の上に載っている様な印象を受ける。

真南に正面を向けて建つ寸松堂は、1階は大半が店舗と工房にあてられ北側に少し居住部分がある。

店舗土間の北東隅に応接室が設けられているが、 この部屋のみ洋室である。

寸松堂のプランは、凹凸が多く屋根は複雑にかかり、容易に全体像をつかむことができない。

この様な建物は、設計と施工を別にしてはとても建て得ないと思われる。

場当たり的に施工したヴァナキュラーな建物ともいえるが、 別段の破錠もみせずこれだけ特異な内・外観を造り得た手腕は高く評価することができる。

繁垂木

垂木割りにおいて一般の本繁割りより密なものの意で、垂木の空き(間隔)を垂木幅に等しくするもの。社寺、殿舎では柱真を挟むように配する。

蟇股

主として和様、後になって天竺様(大仏様)の社寺建築の四脚門、棟門などでは虹梁(こうりょう)上で斗きょう間の中備(なかぞえ)として、あるいは東大寺 南大門のように遊離尾垂木受けとしておかれるか、梁のうえにあって上の虹梁、桁、棟木などの上部の荷重を支える横広がりの装飾的部材。蛙が股を広げたよう な形をしているのでこの称がある。

ヴァナキュラー

その土地本来のものといった意味。

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