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更新日:2020年4月30日

旅館対僊閣

 第19号/平成12年10月1日指定

旅館対僊閣

長谷寺の参道にあって戦前の和風旅館としての佇まいをよく残している建物として貴重な存在です。

特に参道に面した建物正面の外観は特徴的で、2階部分には社寺建築などに見られる高欄(こうらん)が設けられ、これを支える持ち送り板や2階窓の上部に設けられた欄間窓(らんままど)などが独特の風格を醸しだしています。

 

所在地:長谷三丁目

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構造規模:

  • 木造2階建、和小屋組
  • 延べ床面積/393.99平方メートル
  • 屋根/波板鉄板葺き切妻、一部桟瓦葺き
  • 外壁/モルタル塗り大壁、一部波板鉄板張り及び簓子(ささらこ)下見板張り

※旅館として営業しています。

建物の沿革

現在対僊閣のある土地は、明治中期にはすでに鈴木家の所有となっており、おそらくこの地に居住していたものと思われる。

旅館業を営み始めたのは明治末期のことで、屋号も「対僊閣」であったという。

創建当初の建物がどのような建物であったかは不明であるが、関東大震災で倒壊し、その後に建てられたのが現在の建物である。

役場に届けられた書類などから、竣工は昭和2年のはじめであると考えられる。その書類によると2階建てとなっているのは現在の北棟のみで、中棟と南棟の2 階に相当する部分は点線で輪郭が描かれているだけである。中棟、南棟の2階部の完成時期は、はっきりしないが、昭和12年には2階が今日のような状況に なっていたことが固定資産税台帳の副本と思われる図面から確認することができる。

その後、昭和37年頃、それまで連続したプランであった中棟と南棟の1階を分離する工事が行われ、両棟の間に通路が設けられた。これに伴って、南側の1階 の内装が大幅な改造を受けており、また、中棟の廊下東部分にも相当な改装が見られる。さらに、昭和50年頃には、屋根が葺きかえられ、外壁が修理されている。

建物の特徴

対僊閣は、長谷寺の参道に北面して建ち、敷地は間口が狭く、奥行きの深い、いわゆるうなぎの寝床型で、そこに北から南へ3棟の2階建て切妻の建物が棟を東西に並行させて前後に並んで建てられ、1階の廊下でつながれている。

客室7室はすべて2階にあり、1階はサービスや居住のための空間となっている。客室の意匠は、オーソドックスで落ち着いた和風意匠であり、いかにも数寄屋 風といった意匠はみられない。その中で最も意が用いられてつくられているのが北棟であり、1階に相当な改変が見られる中・南棟とは異なって全体がよく残さ れている。

この建物の最大の特徴は、北側のファサード(写真)の意匠にある。北側ファサードの2階には全面に高欄が設けられているが、その高欄は7つの絵様肘木風の 持ち送り板で支えられている。持ち送り板の背は高く、鉄板瓦棒葺き庇の上の簓子下見の高い外壁小壁に取付けられているので、これがファサードを通常の2階 家に比べて建ちの高い印象的なものにしている。

また、2階の小壁に設けられた4つの格狭間風の欄間窓と、1階東側の組子が密な格子窓の存在もこのファサードを華やかなものにしている。高欄、持ち送り 板、欄間窓、格子窓はセットになって独特の雰囲気を醸し出している。建ちの高いファサードは、内部でも生かされていて、玄関たたきと板間の高く広々とした 空間をつくりだしている。板間と帳場の間に設けられた花頭窓も、この玄関の空間に強いインパクトを与えている。格子窓の腰壁は、コンクリート細工で木製に 擬したややキッチュなものであるが、これは創建当時からのものである。ほかにも、研ぎ出し仕上げの人造大理石の傘立てや、洗い出し仕上げの花台など、ここ には巧みな左官技術の所産がいくつかあるが、これらは戦前の優れた左官技術を伝えるものとして貴重であるし、格子窓の腰壁は、そうした試みの最初期のもの に属するとも見られる。

絵様肘木(えようひじき)

唐草、若草、波、渦、雲などの絵や彫刻を施した肘木。肘木は桁などを支持する水平材のこと。

持ち送り板

壁や柱の垂直面から、水平に突出させて庇、梁、棚などの上からの荷重を支持する部材。

簓子下見(ささらこしたみ)

外壁板張り構法のうち下見板張りの一種。階段状に切れ目を入れた押縁(簓子)にあらかじめ板を張りつけ、これを柱と柱の間にはめ込む構法。小舞壁の腰部分を保護するためなどに用いられる。

格狭間(こうざま)

壇、台などの側面や唐度などに施される。上部は花頭形、下部は椀形の曲線からなる装飾的な刳型。

高欄(こうらん)

橋、回廊、廊下等に付けられた欄干をいう。単なる装飾の場合もあるし、人の転落を防ぐ機能をもつ場合もある。

花頭窓(かとうまど)

上部が尖塔アーチ型をいている窓。禅宗寺院の建築とともに中国から伝わって唐様(からよう)建築に多く用いられた。書院窓。源氏窓。

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所属課室:都市景観部都市景観課都市景観担当

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