3.具体的な方針
1)骨格的な幹線道路の整備
(1)外周における骨格的な幹線道路整備
周辺市における道路整備との整合を図りつつ、鎌倉市の外周に骨格的な道路を確保します。
<1>国道134号
海岸部の広域交通機能を強化するため、市街地と海岸を分断しないように配慮し、かつ植栽等による海岸部の景観や環境向上とあわせて、国道134号の機能強化を図ります。
<2>高速横浜環状南線
国、県、横浜市、日本道路公団と協調しつつ、整備の促進を図ります。
<3>横浜湘南道路
国、県、横浜市及び藤沢市と協調し、整備の具体化を図ります。整備にあたっては、農地との調和に配慮します。
<4>横浜藤沢線
県、横浜市及び藤沢市と協調しつつ、整備の促進を図ります。
(2)市の西部を通過する骨格的な幹線道路の整備検討
大船駅周辺及び深沢地域国鉄跡地周辺の拠点整備及び海岸部の交通機能強化に対応するため、市街地環境や緑の保全、市街地の分断、沿道の修景・景観形成に配慮しつつ、海岸部から深沢地域国鉄跡地周辺を通り、高速横浜環状南線方面に抜ける骨格的な幹線道路の整備を検討します。
この道路は、海岸部や丘陵部から深沢、大船方面へのアクセス向上、鎌倉地域への自動車流入抑制といった効果を持ちます。
図 交通骨格の考え方
市民の安全で快適な生活を実現するため、鎌倉地域においては、道路の交通容量範囲内に自動車交通需要を抑えます。骨格的な幹線道路の整備により鎌倉地域を通過する交通を処理する一方、
交通需要管理*を実施します。あわせて歩行者空間の整備による歩く市民生活、歩く観光の促進、鎌倉地域の外縁における観光需要に対応する駐車場整備(
パークアンドライド*駐車場)、公共交通の利用促進等を図ります。
交通需要管理*については、以下のような多様なメニューが考えられますが、関係機関との協議を行うとともに市民との合意形成を図りつつ、実現性や効果を検討し、取り組んでいきます。
・
パークアンドライド*
・
シャトルバス*の運行
・
ゾーンシステム*
・歩行者尊重道路
・
ロードプライシング*
地域の外縁部に駐車場(
パークアンドライド*駐車場)を整備し、観光目的の車をその駐車場に誘導し、駐車場から鎌倉地域の中心部へは、バス、鉄道または徒歩、自転車を利用する
パークアンドライド*システムも1つの方策として考えられます。駐車場の位置としては、自動車のルートにあわせ以下の場所が考えられます。駐車場は、それより内側の交通渋滞の解消や周辺地域の活性化といった効果が期待されています。
<1>海岸部(由比ガ浜、七里ガ浜)
<2>朝比奈
<3>深沢
ロードプライシング*により、自動車の総量を抑制し、公共交通のスムーズな運行を図るとともに、歩行環境、居住環境の向上をめざします。
3)公共交通の充実
以下のような多様な視点から、事業者や関係機関等と調整し、公共交通を充実させ、公共交通間の連携強化、公共交通と徒歩、自転車交通との接続充実を図ります。
・誰にもやさしい交通環境の整備(自動車を運転できない高齢者や障害者の移動を支える)
・自動車交通の抑制による環境負荷の軽減
・観光交通への対応
・
交通需要管理*との連携
・交通不便地区の解消
(1)バスサービスの向上
<1>運行本数の増加
市民の利便性を高めるため、運行本数の増加をバス会社に要請します。
<2>新たなバスサービス
ア.新たなルート整備
以下のようなルートの新設を検討し、必要に応じてバス会社への開設要請や支援を行います。
・深沢地域と鎌倉駅西口を結ぶルート
・住宅地と公共公益施設を結ぶルート
・鎌倉地域の名所を回るループバス
・
パークアンドライド*駐車場と鎌倉地域の中心市街地を結ぶルート等
イ.
デマンドバス*化
利用者のニーズにきめ細かく対応できるように、必要と可能性に応じて、
デマンドバス*サービスの実施を検討します。
ウ.運行速度の向上
以下のような方策により、バスの運行速度の向上を図ります。
・バスの小型化
・直行サービス(中間のバス停には止まらない)
・バスレーンの整備
・バス追い越しシステムの検討
(2)鉄道やモノレールのサービス向上
<1>輸送力の増強
横須賀線の運行本数増加や、大船駅の貨物線への旅客ホームの新設などをJRに要請します。
<2>新駅の設置検討
七里ガ浜高校付近における江ノ電新駅の設置の可能性を検討します。
<3>駅の交通結節点機能の強化
JR、江ノ電、湘南モノレール各駅について、駅前広場の設置や改善整備、駐輪場の整備・充実、エスカレーター・エレベーターの設置等を検討します。特に大船駅西口、鎌倉駅西口において、駅付近の交通結節点機能の充実を図ります。
鉄道とバスの接続向上等バスサービスとの一体化を促進します。
(3)地域別
<1>鎌倉地域
・自家用車利用から公共交通及び徒歩・自転車の利用への転換
・居住者や観光客に対応するバスサービスの充実
・深沢地域と鎌倉駅西口を結ぶミニバスルートの開設
<2>腰越地域
・鎌倉地域及び深沢地域と結ぶ公共交通の充実
<3>深沢地域
・鉄道、モノレール、バス等多様な交通手段の選択性を活かした複合交通拠点の整備
・鎌倉地域と結ぶ公共交通の整備
<4>大船地域
・大船駅北口の開設にあわせた駅前空間の整備
<5>玉縄地域
・大船駅西口における駅前広場機能の整備
・大船・ドリームランド線の再開
・大船駅と結ぶバスサービスの充実
4)快適な歩行者・自転車ネットワークの整備
市民や観光客が車に頼らず快適に歩けたり、自転車を利用できるように、高齢者や障害者の利用に配慮し、誰にもやさしい歩行環境を実現します。主に鎌倉、大船、深沢の都市拠点や腰越拠点に関わる歩行者・自転車ネットワークを整備します。
(1)主要な道路における歩行者空間の整備
買物、通勤・通学、観光、公共公益施設へのアクセス等の歩行者や自転車交通の多い道路については、歩道の設置や拡幅を図ります。また、駅周辺等の拠点的な地区においては、面整備や建築物整備、商店街整備にあわせて、歩行者空間を確保したり、地区計画による壁面の位置の制限等により、歩行者空間の充実を図ります。
(2)歩く道、ハイキングコースの整備
市民や観光客が歩くことを楽しめるように、河川や海岸部、緑地や丘陵部において、プロムナードや散歩道、ハイキングコース等を整備します。
(3)地域別
<1>鎌倉地域
寺社等を回る歩く観光や主要な公共公益施設へのアクセスに対応した歩行者空間を整備します。また、歩いて買物を楽しめるように、商店街の歩行者空間を整備します。
<2>大船地域
大船駅周辺は、商業地としての魅力を高めるような駅周辺の買物や業務に対応した歩行者空間や駅と東側の文化娯楽施設、大規模商業施設を結ぶ歩行者空間を整備します。
<3>深沢地域
深沢地域国鉄跡地周辺の整備に際し、魅力的な歩行者空間を整備します。
<4>腰越地域
腰越拠点の魅力を高めるため、江ノ電沿いの道路の歩行者環境の整備を図ります。
<5>海岸部
海岸沿いの散策が楽しめるような歩行者空間の整備を図ります。
5)住宅地内の交通環境の向上
住宅地の静かな環境を守り、防災性を高め、市民が安全で快適に生活できるように住宅地内の交通環境の向上を図ります。
(1)生活道路の改善
住宅地の身近な生活道路については、交通規制等により通過交通を排除しつつ、隅切りや交差点改良を行い、安全性を向上します。また、
ハンプ*の設置等により、車の走行速度を低め、歩行者の安全確保を図るとともに、静かな環境を守ります。
細街路については、地区の主要な車の動線となっている道路や緊急車両の進入が必要な道路等、重要な道路について、拡幅整備を推進します。
(2)行き止まり道路の解消
行き止まりの谷戸やアクセス道路が1本しかない丘陵の計画開発住宅地については、災害時の2方向避難を確保するため、通過交通の排除に留意しつつ、通り抜け道路や新たなアクセス道路の整備を検討します。
6)地域間を結ぶ主要道路整備
沿道の土地利用の誘導や景観向上に配慮しつつ、防災性を高め、拠点を支える道路や分節化された市街地を結ぶ道路、市内と市外を結ぶ主要な道路を整備します。また、円滑な道路交通を確保するため、交差点改良等必要な道路整備も行います。
(1)大船駅周辺の道路整備
大船駅周辺へのアクセスや集中発生する自動車交通に対応し、未整備の都市計画道路を含めた周辺の道路整備を行います。また、歩行者と車が安全に通行できるように踏切整備を行います。
(2)深沢地域国鉄跡地周辺の道路整備
深沢地域国鉄跡地周辺の整備に伴い発生する自動車交通処理のため、未整備の都市計画道路を含めた周辺の道路整備を行います。
(3)鎌倉駅周辺
交通需要管理*の実施とあわせ、交差点改良等必要な道路整備を行います。
(4)鎌倉と大船を結ぶ道路整備
鎌倉と大船の一体性の強化や横浜鎌倉線の渋滞の緩和を図るため、環境保全に配慮しつつ、道路の整備を図ります。
(5)市内と周辺市を結ぶ道路整備
鎌倉市と横浜市、藤沢市、逗子市を結ぶ道路の整備を図ります。
7)駐車場の整備
交通需要管理*の実施及び拠点としての土地利用や機能集積上必要な駐車場を市街地整備等にあわせて整備するとともに、既存の駐車場の有効利用を図ります。なお、駐車場の整備にあたっては、緑等の自然環境の保全や良好な景観形成に留意します。
(1)鎌倉地域
鎌倉地域の外縁部において、
パークアンドライド*駐車場を整備します。この駐車場整備により、地域内の交通渋滞の緩和といった効果を期待します。
また、地域内においては、自動車交通需要を引き起こす駐車場の整備を極力抑制する一方、日常の買物、業務目的の駐車需要に対しては適切な駐車場を設置します。
長谷地区、北鎌倉地区においては、新たな駐車場整備を行うのではなく、鎌倉地区を中心とした
パークアンドライド*駐車場+公共交通システムの導入と一体となった
交通需要管理*で対応します。
また、海岸部における夏期の駐車需要には、臨時駐車場と公共駐車場で対応することを基本としつつ、不足分については公共駐車場の整備を検討します。
(2)腰越地域
地元商店街など、腰越地域の活性化に役立つ駐車場の整備と、海岸地域における、
交通需要管理*の一環としての
パークアンドライド*駐車場の確保に努めます。
(3)深沢地域
深沢地域国鉄跡地周辺の整備にあたっては、今後構想される整備内容に応じて、駐車場整備を検討します。
(4)大船、玉縄地域
大船駅周辺においては、既存の駐車場を効率的に利用するためのシステム整備を行うとともに、市街地整備とあわせて積極的に買物、業務、観光需要に対応する駐車場の整備を推進します。
8)駐輪施設の整備
自転車交通が集中する拠点駅周辺においては駐輪施設の充実を図りながら、駅周辺の違法駐輪等の整序化を図るとともに自転車利用を促進します。
9)交通情報システムの整備
道路の渋滞状況や駐車場の利用状況等運転者に対する適切な情報を提供するシステムを整備します。