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更新日:2025年2月18日
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第6号/平成4年3月30日指定
ハリス記念鎌倉幼稚園は明治43年創立で、市内で最も歴史のある幼稚園として知られています。この建物は、大正12年の関東大震災により倒壊した前園舎にかわり、大正14年に建てられました。建物は「梅鉢型園舎」と呼ばれる珍しいもので、中央に遊戯室、それを囲むように舞台、教室が配されています。
由比ガ浜二丁目
(注)公開はしていません。
ハリス記念鎌倉幼稚園の創立は明治43年で、名称の「ハリス」とは、明治,大正に日本や朝鮮で活発な布教活動を行ったアメリカのメジストキリスト教会宣教師M・C・ハリス(1846~1909)の夫人フローラ・ベスト・ハリスのことである。しかし、ハリス夫人は幼稚園設立に協力を約束しつつも、完成の前年に死去している。
ハリス記念鎌倉幼稚園は当初専用の幼稚園舎を持たなかったが大正10年に園舎が竣工した。この園舎は八角形プランで現在の園舎ホールと類似している。
しかし、このユニークな八角形プランの園舎は、隣接する教会と同様にわずか2年後の関東大震災により倒壊した。
そして、仮園舎の期間を経て新築されたのが現幼稚園舎である。
起工は大正13年11月11日、定礎式が同月27日に行われ、翌年3月末に完成している。
構造は鉄筋コンクリート造であり、震災後本市に初めて登場したコンクリート造建物の中でも最初期の建物である。
その後数回の改修を経て現在に至っているが、東北隅のかつての玄関にポーチを設けたこと、東南隅を内部化して玄関土間としたこと、それに西南隅の外部から増築への連絡をつけたことの3点を除けば、ほぼ創建当初の姿を保っているということができる。
ハリス記念鎌倉幼稚園の特徴は、四方対称、八角形を基本とした求心性の強いプランにある。
基本となる八角形は一辺44尺の四隅各9尺分をカットしたもので正八角形ではない。
したがってこの八角形の長辺は26尺、短辺は約12.7尺ということになる。
そして長辺がほぼ東西南北の方向を向くように配されて、その各長辺に、奥行9尺の下屋が張り出ている。
当初は、この全く幾何学的な形のままであり、シンボリックな一種の円堂的印象を与えたものと思われる。
内部は、八角形の中央が遊戯室、4つの下屋のうち、西側が舞台で、他の3つは教室である。
この様な八角形プランの遊戯室の周囲に教室を配したスタイルの「梅鉢型園舎」は、岡山市の旭東小学校付属幼稚園(明治41年竣工)、帯広市の双葉幼稚園(大正11年竣工)などいくつか知られている。
「梅鉢型園舎」は、フレーベルの教育思想やライトの住宅建築のプランの他様々な要素が加わってできあがったものと思われるが、ハリス記念鎌倉幼稚園は「梅鉢型園舎」の希少な遺構の一つとして貴重である。
さらにもう一つの園舎の特徴は、鉄骨トラス構造の屋根部分で、44尺の径間を縦横に行き交うキングポストトラスで支えられている。
しかも下弦材が水平でなく、中央が高くなっており、内部空間にもドームの様な求心性を表現しようとした意図がみられる。
この点は帯広の双葉幼稚園にも見られない特徴であるが、それを可能にしたのは、鉄筋コンクリートと鉄骨という新しい技術であり、こういった技術面においてもこの建物は、貴重な遺構であるといえる。
その他、窓は尖塔アーチ窓で、隣接する教会との連続性が意図されている。
1階は、アルミサッシュに変えられているが、2階は鉄製のユニークな回転窓及び両開き窓が良く残されている。
トラス部材の組み方において、山形トラスの中央に垂直材(真束)のあるトラスのこと。真束(しんつか)小屋組ともいう。