3.具体的な方針
1)構造別景観形成の方針
(1)都市景観の基本構造
本市の景観づくりを進めるにあたっては、市域全体が「古都」であることに配慮し、鎌倉市全域を「古都鎌倉大景域」と設定します。
そして、景観上の特徴などから「古都鎌倉大景域」を2つの「景域」に分け、これをさらに5つの「景観地域」に分けることとします。
また、都市景観の構造上の重要な骨格として、4つの拠点と4つのゾーン(鎌倉市都市景観形成基本計画ではベルト)を設定します。
都市景観の形成にあたっては、この都市景観の基本構造を指針とし、具体的な方針を定めるものとします。特にゾーン及び拠点では、市民参加により各地区のまちづくり構想、計画の策定とあわせてまち並みのあり方を検討し、地区計画、美観地区、高度地区、景観形成地区などの適用や都市景観形成事業の推進を図ります。
図 都市景観の基本構造
(2)景域
本市は、大きくは二つの景域によって構成されます。
ア.【古都景域】…鎌倉地域とその周辺の谷戸・丘陵からなる歴史的色合いの濃い地域です。「古都鎌倉」の中核をなしています。
イ.【都市景域】…大船・深沢・腰越地域の市街地と、それらを取り囲む計画的に開発された住宅地の点在する丘陵地域と、農業振興地域を持つ玉縄地域とからなっています。「新しい鎌倉」としてのまちづくりが進行中です。
(3)景観地域
2つの景域は5つの景観地域に区分されます。
【古都景域】
<1>古都景観地域
古都としての鎌倉の都市軸に若宮大路を据え、その周辺を取り巻く歴史的・文化的資源、古都景域の中心に位置する鎌倉駅周辺、樹々の間に見え隠れする住宅、さらに眼前に開ける海浜部までを一体として、風情と風格を備えた美しい歴史的都市景観を整えていくことをめざします。
<2>古都丘陵景観地域
豊かな自然と多くの歴史的遺産が融和した歴史的風土における、緑豊かな低層住宅地としての景観を保全・創造していきます。
【都市景域】
<3>都市景観地域
新たな鎌倉としての大船・深沢・腰越の拠点を中心に、周辺環境、市街地の緑の保全・活用等と調和させつつ、快適で活力溢れる都市景観を整備します。
<4>都市丘陵景観地域
丘陵地に計画的に開発された住宅地の点在する地域として、宅地内の緑化を基盤としながら、樹林地や公園などの環境資源の保全・活用を図りつつ、全体として緑豊かな公園的な景観形成をめざします。
<5>玉縄丘陵景観地域
丘陵地に広がる文教施設や住宅からなる閑静なまち並みと田園とをあわせ持つ、穏やかで伸やかな地域特性を大切にした景観形成を図ります。緑地の保全及び、貴重な農地の保全を図り、田園景観と良好な住宅地の景観とが調和した整備をめざします。
(4)拠点
<1>鎌倉駅周辺拠点
古都景域の中心的位置づけとして、また、古都鎌倉の顔として、ゆとりと風格、活力とをあわせ持ち、かつ背景の山並みと融和した、魅力ある景観形成を図ります。
<2>大船駅周辺拠点
古都鎌倉の玄関口にふさわしい魅力ある都市景観の形成をめざします。
活力ある商業・業務地としての顔と、文化的資源、大船観音などの景観資源とを共に活かし、適正な土地利用の誘導、魅力ある歩行者空間の創出、緑やオープンスペース*の創造などを通してゆとりある景観形成を図ります。
<3>深沢地域国鉄跡地周辺拠点
新しい都市拠点として、残された自然環境(都市の緑)を活かし、泣塔などの歴史的遺産(文化財等の歴史的資源)に配慮し、都市の活力と快適性を備えた魅力ある都市景観の形成を図ります。
<4>腰越拠点
海、漁港や寺社、後背の緑などの資源を活かし、気軽に立ち寄ることのできる気さくで親しみのある商業地として、小動岬周辺の歴史性や江の島一帯の整備状況等にも配慮しつつ景観整備を進めます。
(5)ゾーン(ベルト)
<1>海岸ゾーン(海浜ベルト)
背景としての山並みに対する前景としての海浜部は、歴史性を有すると同時に、鎌倉全体に明るいイメージを与える環境資源です。漁港やその周辺の海に関わりの深いまち並みと、和賀江嶋、稲村ヶ崎、小動岬などの歴史的資源、それらを結んで走る国道134号とが一体となって調和する海浜景観の保全・創造をめざします。
<2>鎌倉シンボルゾーン(若宮大路ベルト)
古都鎌倉の象徴として、歴史性・文化性を色濃く打ち出した沿道とその周辺の景観整備が必要とされます。背景の山並みと調和した建築物の整備、積極的な道路景観整備と、沿道建築物等の景観誘導を行っていきます。
<3>北鎌倉ゾーン(北鎌倉ベルト)
北鎌倉ゾーンは、北鎌倉駅を挟んで以東の古都景域へ続く入口としての役割と、駅以西の大船方面の都市景域へ続く商工業地としての役割とを担っています。歴史的環境に融和した沿道景観の整備と、安全で魅力的な歩行者空間の創造を通して、古都景域と都市景域とを結ぶ連続性を大切にした、
ヒューマンスケール*のまち並み景観の形成を図ります。
<4>大船・深沢ゾーン(柏尾川ベルト)
大船・深沢の2拠点を結ぶ地域として、親水空間の創出等、川と人との関わりに根ざした河川景観の整備を軸とした秩序ある都市景観の整備を図ります。交通ネットワークの充実に伴う緑化を中心とした道路景観の整備、魅力ある歩行者空間の創造、周辺大規模施設の緑化や建物相互のまとまりとしての調和、適正な土地利用の誘導等を図り、さらには東海道本線からの車窓景観をも意識し、背景の山並みと調和した一体的な都市景観の整備を進めます。