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更新日:2025年3月5日
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「地域から、共生社会をつくる」と題し、各地で先進的な活動をされている方たちの話を複数回にわたりシリーズで聞くことで、心のバリアをなくし、見方を変えるきっかけや、誰も排除されない「ごちゃまぜ」の環境や場所をつくっていきたいと考えています。
第5回「地域包括ケアシステムと地域共生社会とSDGs」
講師・又村あおいさん
内閣府「障害者差別解消法アドバイザー」、平塚市職員
講演内容
平塚市役所にて障害者福祉に従事したのち、内閣府に出向。現在は平塚市に戻り、内閣府の障害者差別解消法アドバイザー、全国手をつなぐ育成会連合会の政策センター委員等としても活動されています。今回の講座では、現場で起きていることと、国の動向の両方からの視点から福祉に関する今後の課題や、自治体・市民がどう考え行動すべきかなどを軽妙なトークでわかりやすく伝えていただきます。特に地域包括ケアシステムと地域共生、SDGsとの関わりや今後の見通しについてお話しいただきます。
プロフィル写真撮影:上樂博之
≪開催日時≫令和2年(2020年)1月31日
≪開催場所≫鎌倉市役所第3分庁舎講堂(鎌倉市御成町18-10)
≪定員≫60名程度
≪参加費≫無料
≪対象者≫鎌倉市内に在住・在勤・在学の方
SDGsとは、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことで2030年までに達成すべき17の国際目標が掲げられています。目標の分野は多岐に渡り、飢餓・貧困、インフラ、気候・環境、衛生、教育、保健医療、福祉などがあります。
SDGsの理念として、【誰一人として取り残さない】とあることから、従来の福祉制度では「取り残し」が生じている分野に対しても、SDGsの視点からは何らかの取り組みが必要だといえます。
そこで、従来の福祉制度に該当しない人たちも取り残さないよう、制度の隙間を補う「地域共生社会」という仕組みが必要となってきます。
国の示す政策は、障害・高齢福祉分野でみると基本的に汎化・拡大の方向性となっています。
行政がサービスを決定する措置制度から契約による福祉サービスの利用に移行するなかで、利用者の選択肢と自由度が拡大しました。その後、障害の有無に関わらず共に生きる地域づくりという障害分野の考え方を基に「共生社会」の概念がうまれ、急速な高齢化を踏まえて年齢や障害を問わず包括的に支援するシステム「地域包括ケアシステム」が導入されました。それが発展し、誰にでも出番と役割のある地域共生社会の実現を目指した「地域共生社会」という新しい考え方が出てきました。そして今、SDGsの理念と地域共生社会の構築の考えが一致し、地域共生社会を全分野に展開することで、誰一人として取り残さない社会の構築を目指す流れになっています。
したがって、地域共生社会とは、障害者施策分野で先行していた「共生社会」の考え方と、本来は全世代・全福祉分野を対象とすべき「地域包括ケアシステム」を掛け合わせたものだといえます。
地域共生社会の前段の「地域包括ケアシステム」とは、地域において介護(予防)や医療など主に高齢者に必要な自立支援を行う仕組みで、「自助・互助・共助・公助」の組み合わせが肝になるとも言われます。このうち、共助と公助は主に福祉サービスとして提供されるもので、自助は自らの健康保持や介護予防や民間の保険加入などにあたり、互助は近親者による支援や援助、近隣住民による相互支援などを指します。
今、その「互助」の重要性が増しています。
地域共生社会の成否は「相談の総合化(ワンストップ化)」と「地域の課題解決力(支えあい力)向上」の2点がポイントになります。しかし、ワンストップ相談で受け止めた事案をどこにもつなげないと、相談員が抱え込むことになり、ほどなく破綻することが見込まれます。そのため、相談の「出口」戦略として、互助であるつながりや「居場所(リンキュベートプレイス(注1))」の構築が必要不可欠なのです。
時代とともに近隣住民との相互援助力である「互助」は低下しています。これからは、新しい「地域のつながり」、新しい「相互援助力(役割の入れ替わり)」が必要となります。役割の入れ替わりとは、日ごろは支援を受ける人でも、支援があることで場面に応じて地域に不可欠な存在となり、人材が循環するイメージです。
そこで、地域の縁に加えて、課題の縁でつながり、分野に特化した経験や知識のあるNPOなどが重要になるといいます。
現在、自治会活動には参画せずに、NPOなどの市民団体に所属している人が増えています。しかし、NPOでは地域共生社会の地域割りにマッチングしないことが課題となるため、「課題縁」のNPOと、「地縁」を結びつける「居場所(リンキュベートプレイス)」が必要となってきます。
リンキュベートプレイスでキーとなるのは、地域で困りごとを抱えた人と、NPOなどの課題解決団体(活動)をつなげる人材と機能です。その人材には、行政や専門事業所等の強い専門性ではなく、水平的で弱い専門性を持ったコーディネーターの役割が求められます。コーディネーターの主な役割としては、地域住民からの相談を受け、NPOなどのボランティアに援助活動の依頼をするなどがあります。内容によっては行政等につなぐ役割になります。国家資格は必ずしも必要ではありません。
今後は、そういった人材の育成や、それぞれの立場の人たちをつなげる場や機能が必要で、その居場所がリンキュベートプレイスなのです。
最後に、平塚市の「町内福祉村」や長野県千曲市の「ごちゃまぜカフェ」の実例をご紹介いただきました。
今回の講座は、職員の研修も兼ねて行われました。国の政策の動向から、地域共生社会をつくるために市民の皆さんができること、その「居場所」づくりや続けるためのサポートを行政としてどうしたらよいかなど、たくさんのヒントをいただくことができました。
(注1)リンキュベートプレイス…(LINKubateplace)「リンク(Link)」と「リ・インキュベート(Re-Incubate)」を組み合わせた又村さんの造語
【会場の様子】たくさんの方が真剣に話を聞いていました
所属課室:共生共創部地域共生課くらしと福祉の相談担当
鎌倉市御成町18-10 本庁舎1階
電話番号:0467-23-3000
内線:2496