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更新日:2023年9月27日
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午前4時。真っ暗闇の中、ヘッドライトを頼りに若手漁師の石田さんが漁の準備をしています。ここは鎌倉漁業協同組合の拠点の一つ、材木座海岸。風が少し吹いているこの日、どうやら漁に出るのは石田さんの船だけのよう。材木座や坂ノ下では船を台車に載せ、波や風に逆らいながら浜から人力で出漁しています。そのため、波打ち際の波の高さによっては出漁を諦めることも珍しくないそうです。「よし、行くか!」勢いよく、船を押し出していきました。
台車が残された海岸では、日の出とともに愛犬の散歩をする人やサーファーたちが行き交います。3時間ほどして船が戻ってきました。出航とは逆の順序で船を引き上げていきます。船の中にはカワハギやイセエビなど。休む間もなく魚を活け締めにしていきます。「よりおいしく食べられるように」と石田さん。こうした丁寧で大変な仕事が鎌倉の「海の幸」を支えています。
そんな海の幸を直接買えるのが「漁協の朝市」です。ずらりと並んだ魚介類を前に、こんなにも豊かな漁場が身近に広がっていることに驚く人も少なくありません。
また、市内の学校給食の食材にも使われており、ワカメのみそ汁などは子どもたちに大人気。地元の海の幸を地元で消費する「地産地消」は、食育にもつながっています。
さらに漁業の枠を超えた「幸」を生む取り組みも行われています。鎌倉の漁師と福祉事業者などが連携する「鎌倉海藻ポーク」をはじめ、海岸清掃、お魚教室など、海から「マナブ・ツドウ・トル」の活動は、地元漁師、近隣住民、自治会・町内会、地域活動団体の方々の有志によって支えられています。
ところで、冒頭のように漁船の出し入れを砂浜から行うのは全国的にもかなり珍しく、漁業の拠点となる施設がないため、鎌倉の漁師たちの大きな負担になっているのです。また、船の出し入れの際に、海で遊ぶ人と接触する危険もはらんでいるため、海岸を訪れる人にとっても他人事ではありません。
そこで市では、鎌倉の水産業を支える「ミヅキカマクラプロジェクト」を立ち上げました。「ミヅキ」という言葉は、鎌倉で古くから行われている覗突(みづき)漁から取っています。
漁業支援施設を整備することで安定的に漁ができるとともに、海を楽しむ皆さんの安全が守られるのはもちろん、浜に置かれている漁船などが集約されて海岸が広々とします。そして、これからもまちに学びやにぎわいをもたらし、たくさんの「幸」が次世代へと受け継がれていきます。
そんなこのまちの漁業を応援するためにも、まずは地の魚介類を味わってみませんか。10月1日の「魚まつり」にぜひお越しください!
定置網や刺網で獲れた地魚や、「鎌倉海老」でおなじみのイセエビなど、鮮度抜群の水産物を販売(売り切れ次第終了。荒天・不漁時は中止)。
【問い合わせ】鎌倉漁業協同組合 電話:22-3403
鎌倉・腰越漁業協同組合では「漁協の朝市」をそれぞれ開催しており、毎年10月の鎌倉漁協の朝市は「魚まつり」として盛大に行っています(10月の腰越漁協の朝市は10面参照)。そのほか、鎌倉の水産物が購入できる場所を「朝市マップ」として紹介しています。ぜひご覧ください
坂ノ下や材木座では、エビ網、三枚底網、タコカゴ、ワカメ養殖など、さまざまな漁が行われています。覗突漁の箱メガネから見る海は別世界。これからも鎌倉の水産業が発展していくことを願って「ミヅキカマクラプロジェクト」を立ち上げました
「浜に打ち上がった海藻を回収・加工する仕事で収入を得るだけでなく、普段は来ることの少ない海で潮の香りを感じたり、漁師の皆さんと交流したりして、社会とのつながりを感じています」(発起人・矢野ふき子さん)
「自分の集めた海藻で、おいしいお肉ができるのがうれしいです」
鎌倉在住の料理家・矢野さんが発案し、鎌倉漁協と福祉施設が連携して実現した「鎌倉海藻ポーク」
「子どもたちが魚に興味を持ってくれてうれしかったです」(漁師・三留綱太さん)
「ふだん魚はあまり食べないけれど、食べてみたくなった!」
「海がきれいになると気持ちがいいね♪」
「鎌倉の海で獲れたものを子どもたちが味わい、おいしかったと言ってもらえるのが何よりの励みです」(漁師・前田桃子さん)
「おかわり!」完食!
「食感が良くておいしかった!」
「新鮮でおいしそう!」
「値段もお手頃!」
「ヒジキ買ったよ」
材木座・坂ノ下海岸には漁業の拠点となる施設がないため、漁船や漁具倉庫、漁具などが浜に点在しています。そのため、船の出し入れに大きな負担が掛かるだけでなく、さまざまな危険もあります。
防波堤のような波を抑える構造物がないため、海岸付近の波が高いと船が転覆する危険があります。また、漁から戻って浜にある台車を取りに行く際、漁船から手を放さざるをえないため、船が漂流し、座礁してしまうこともあります。
漁船の出し入れの際、マリンスポーツや散歩をする人たちと接触してしまう恐れがあります。
台風の時などには、浜にある漁具倉庫は波による被害を受けやすく、過去にも漁具倉庫が被災し、壊れた建材や漁具が砂浜や国道にまで散乱してしまったことがあります。
漁業支援施設は砂浜を分断しない場所(坂ノ下の海岸の端)に、消波ブロックなどの既存の構造物を活用しながら必要最小限の規模で整備していく予定です。
これにより、浜に点在する漁船と漁具倉庫がここに集約されて海岸が広くなると同時に、漁船と一般の利用者が交錯する危険性を減らすことができます。
整備に当たっては、国の補助事業などを活用することで市の財政負担の軽減に努めていきます。
(年度)
海から「マナブ・ツドウ・トル」のさまざまな活動を取材し、発信しています。漁師さんへのインタビューや、鎌倉の魚介類を使った学校給食の様子のほか、今回の本紙取材で掲載しきれなかった写真やお話などもアップしていく予定です。
ぜひ、チェックしてください!
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