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更新日:2022年11月14日
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平成7年7月に発足した「鎌倉地域交通計画研究会(以下「研究会」という。)」は、平成8年5月に「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言(以下「提言」という)」をまとめ、市長に報告するとともに、その後提言した施策について市民参画のもとに3回にわたる社会実験や市民意識調査、交通シミュレーションなどを通して、施策の評価を行ってきました。
その結果、平13年10月には「七里ガ浜パーク&レールライド」と「鎌倉フリー環境手形」、さらに12月には「由比ガ浜パーク&ライド」が実施される運びとなり、研究会活動は着実にその成果を上げていました。
しかし、提言された施策の中には、未だに社会実験が行なわれておらず、評価するに至らなかったものもあり、今後これらの施策をどのように検討していくかなどの課題が残されていました。
そこで、研究会は、これまでの活動の総括及び交通環境の改善に向けた取り組みの方向を「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言・その2(以下「提言2」という。)としてまとめることとしました。
バブル経済の崩壊や最近の経済状況などの影響を受けて、鎌倉市内への入込み観光客数を主とする来訪者数や鎌倉地域の交通量は減少の傾向が見られます。しかし、未だに行楽シーズンを中心に、30分以上の遅れが出るなど、バスの定時性は確保できていません。
また、東京湾岸道路、高速横浜環状南線、横浜湘南道路などの広域的な道路網が整備されることで、自動車での利便性が向上し、地域への通過交通の進入が大幅に減少することが予想される一方、目的地への移動がスムーズになり、観光交通等が増加する可能性もあります。
これらの交通状況の変化を踏まえ、研究会で検討を行なった結果、鎌倉地域においては、依然として交通混雑が著しく、将来的には周辺での高速道路網の整備や景気動向などにより、交通混雑が拡大する可能性があることから、今後も地区交通計画を推進していく必要性が高いという結論に達しました。
地区交通計画への取り組みに対する市民意識については、第一回市民意識調査(平成7年10月)、第二回市民意識調査(平成8年11月)、第三回市民意識調査・社会実験での来訪者意識調査(平成11年11月)を通じて把握してきており、その結果概要は次のとおりです。
ア:特に休日での混雑が問題とされており、安全で快適な歩行環境をつくることが最も重要だとされている。
イ:車の乗り入れ制限は多くの居住者が支持しているが、実験等による効果や影響を確認し、曜日や時間
の限定や情報提供による混乱の回避を望んでいる。
ア:居住者、事業者ともに提言に高い関心を示し、市民参画・社会実験などの取り組み方に賛同している。
イ:公共交通サービスの充実により、新たな観光需要を増やすといった地区交通計画の基本的な考え
は、多くの居住者・事業者が賛同している。
ウ:ロードプライシングには、居住者の賛否が分かれている。
エ:自動車利用の抑制には、公共交通の充実は必要であるとしている。
オ:歩行者尊重道路の整備には、居住者の6割強、事業者の5割が賛成している。
ア:市民参画・社会実験などの取り組みには、多くの居住者、商業者が賛同している。
イ:自動車交通の抑制という地区交通計画の基本的な考え方は、多くの居住者、商業者、来訪者が賛同し
ている。
ウ:混雑の著しい休日に限定した課金システムの考え方については、居住者の6割強が賛同し、1割強が導
入は必要ないとしている。また、商業者の4割強が賛同し、3割強が賛同できないとしており、両者でズレが
生じている。
地区交通計画に対し、鎌倉商工会議所等からの要望書、「明日の鎌倉の交通を考える会」(16,000人の署名)からの陳情書などが出されています。研究会としては、これらの要望書や陳情書を真摯に受け止め、このような要望や陳情が起きた原因を掴むだけでなく、今後、市民の意向を正確に把握するために何をなすべきかを研究していくことが必要と考えられます。
特に、ロードプライシングについては、今回の要望や陳情を誤解として否定するのではなく、その具体的方法を明らかにし、市民の意向を確認して合意形成していくプロセスの出発点とすべきであると考えられます。
研究会は、国内外の取り組み事例や社会実験の仕組みなどの研究及び議論の中から、これまで多くのことを学んできました。そして、個々の施策が提案され、それが実現に至るまでのプロセスとして、次のようなステップを踏んできました。
第一に、多くの人が参加し情報を共有した上で施策を提案する、第二に、それらの提案を社会実験することにより問題点を明らかにして、影響や効果を評価し、市民の合意が得られるように改善する、その後、試行を試行を通じ、より望ましい施策に改良しつつ実施に移行していくステップを踏むこととしています。
この取り組みは、フィードバックによる問題点の習性、市民や関係者間のオープンな議論を可能にします。
研究会は、この仕組みを研究会活動を進めていく上での基本としてきました。
研究会は、提言で示した20の施策について、種々の観点から総合的に評価を行ない、以下3つの施策郡に分類しました。
ア:七里ガ浜パーク&レールライド
イ:鎌倉フリー環境手形
ウ:鎌倉参道線での公共交通優先レーン(下馬から鎌倉駅間)
エ:海浜公園パーク&バスライド
オ:シャトルバス(海浜公園から鶴岡八幡宮を循環)
カ:円滑な交通制御(下馬交差点)
キ:プロモーション(可能なものから実施)
研究会では、これまでの検討において、利用者ニーズ、個々の施策の実現性と効果、市民や交通事業者の理解と協力が確認できた上記7つの施策について、鎌倉市に対し、その実施を進めるように提言する。
これらの施策については、社会実験等において、単独でも公共交通機関の利用促進に寄与することが確認されていることから、「実施に移すべき施策」として提言するものである。
また、プロモーションの実施にあたっては、市民、事業者、行政の力を集結し、取り組みが可能になったものについては、準じ進めるよう鎌倉市に対し要請する。
ア:パーク&バスライド(深沢地域国鉄跡地)
イ:パーク&バスライド(鎌倉霊園)
ウ:シャトルバス(鎌倉霊園から鶴岡八幡宮)
エ:シャトルバス(大仏から材木座)
オ:シャトルバス(市役所から湘南深沢駅)
カ:乗合タクシー
キ:歩行者尊重道路(今小路通り)
上記7つの施策については、社会実験などを通じて研究会として施策へのニーズや効果、影響を確認したが、実施に移すためには、採算性や駐車場の確保などの課題を解決することが不可欠である。
これらの施策については、鎌倉市として取り組みを継続し、課題の解決を図り、施策の具体化を推進するように提言する。
ア:ロードプライシング
研究会では、ロードプライシングの基本的な考え方や社会実験(案)について検討し、また、施策による鎌倉地域内のシミュレーションを実施し、さらに、3回の市民意向調査によって「自動車利用の抑制策」に対する市民等の意識把握に取り組んできたが、今後は、ロードプライシングの基本的な枠組みを明らかにできた時点で再度本格的な市民意向調査を行なう必要がある。
また、平成11年度の社会実験後、一部の商業者等から、課金制度(ロードプライシング)等に反対する陳情や要望書が提出されており、こうした関係者と連携を図りながら取り組みを進めていく必要がある。
イ:バス追越し現示
研究会では、バス追越し現示の必要性、シミュレーションによるバス追越し現示の導入効果及び実験計画(案)の検討に取り組んできたが、社会実験の具体化を図るには、技術的な問題の解決や警察、道路管理者、交通事業者との調整が必要であり、もう少し時間をかけて検討を行なう必要がある。
ウ:歩行者尊重道路(小町大路、海浜公園から周辺観光拠点、江ノ電長谷駅)
エ:ゾーンシステム
歩行者尊重道路については、平成11年度に社会実験が行なわれた今小路通り以外、具体の検討がなされていない。これらの施策は、地元の自主性をもって取り組むことが必要であり、鎌倉市に対しては、地元の居住者や商業者を中心とした計画検討組織の整備に積極的な取り組みを進めることを要請する。
オ:総合的な交通情報
平成11年度に実施した社会実験では、交通情報による来訪者の行動や鎌倉地域に与える影響等について、明確なデータを得ることが出来なかったため、情報提供のあり方について引き続き検討を進める必要がある。
また、パーク&ライドの実施に関する交通情報の提供、鎌倉地域内の駐車場の満空情報、道路混雑の情報等取り組みが可能な交通情報の提供については、積極的に取り組むことを鎌倉市に要請する。
カ:プロモーション
プロモーションについては、「自動車利用の抑制と公共交通の活用による安全で快適な地域づくり」、「歩行空間と居住環境の再生による市民生活と観光が共生できるまち」、「活力とにぎわいのある歩いて楽しい古都かまくらの観光地づくり」という地区交通計画における計画目標の実現に向って、居住者、観光・商業者、交通事業者、行政が一体となって継続的に取り組めるプロモーションの企画、運営を検討する必要がある。
研究会では、様々な分野から参画した委員の熱心な活動の中で、検討、意識調査、シミュレーション、社会実験、評価等を積み重ね、いくつかの施策については、本格的な実施へ移行することができました。
また、今後検討を要する施策についても豊富な議論の材料を提供することができ、研究会としての役割は果たし得たと思われます。
今後の活動としては、市が調査、社会実験、評価等に積極的な取り組みを行なうとともに、市民、商業者、来訪者等に対して充分な周知、情報公開を徹底する必要があると考えられ、加えて誤解や認識不足を生じさせないスムーズな合意形成が図られるような仕組みづくりも構築しなければなりません。
そこで、今後の地区交通計画の推進に当たって、特に積極的な取り組みを要する事項を以下に示します。
社会実験を積み重ねることの重要性は、誰もが考えるところであり、物事を動かす方法としての意味は大きい。さらに、「考え方」の視点を広げ、まちづくりにも大いに役立つと考えられ、必要に応じて社会実験をお粉手いくことが重要である。
社会実験に対する批判や反対陳情等については、これを積み重ねてきた結果の当然な意見であるが、その根底にあるものを理解し、同じテーブルで自由に意見交換できる場を設定する必要がある。
地区交通計画の推進にあたっては、情報提供の不足に基づく謝った認識から生ずる誤解、反発を引き起こさないように、多様なプロモーションを実施していくとともに、検討社会実験、評価、実施の各段階において、市民、商業者、来訪者及び行政が同じレベルの情報を共有することが重要である。
地区交通計画の推進にあたっては、批判や反対意見の根底にあるものを理解するとともに、市民生活や生業を脅かすことのないように配慮しつつ、市民等相互に合意形成が図られるような仕組みを構築する必要がある。
施策を効率的かつ協力に推進していくためには、提言にある「鎌倉地区交通市民宣言(案)」を確定することが重要である。
地区交通計画の推進にあたっては、多面的な取り組みが必要であるため、観光、産業振興、道路整備、まちづくり等、関係課を含めた全庁的な対応が必要である。
行政が企画・計画を立案し、それを市民に公開して、意見を聞きながら施策を進める方式が限界に近づきつつあることから、今日の社会で認識されてきている市民参加、あるいは市民参画方式への転換が着実に成果を上げていることは周知の事実です。
こうしたことからも、研究会が果たしてきた役割は重要であり、この新しい取り組みが各方面に与えた効果は大きく、高い評価を得ているものと考えます。
しかし、特にロードプライシングについては、反対の意見や要望の声が大きくなっており、研究会の最終取りまとめの議論においても、この問題をどのように評価すべきか議論が重ねられ、必ずしも円滑に検討が進められたとは言えない状況にありました。
そこで、研究会は、この提言2のまとめを一つの区切りとして、今後は新たな枠組みも検討する必要があるとの考えに至り、この場合、これまでの研究会の資産をベースに、これを基本として進めていく中で、議論を効率的にまとめるプロセスを予め定めておくことが重要であり、この仕組みをつくることによって、市民主体の柔軟で実効性のある地区交通計画が定められるもと考えます。
鎌倉地域の地区交通計画に関する提言その2(PDF:2,031KB)
鎌倉地域の地区交通計画に関する提言その2(付属編)(PDF:8,280KB)