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更新日:2021年4月5日

鎌倉地域の地区交通計画に関する提言

はじめに

「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言(以下「提言」という)」は、鎌倉地域交通計画研究会(以下「研究会」という。)が平成8年5月、鎌倉地域の交通環境改善に向けてまとめたものであり、提言の冒頭にその目的が説明されています。以下は、提言より抜粋した内容です。

提言内容抜粋

「鎌倉地域交通計画研究会は、平成7年7月に発足し、鎌倉地域の地区交通計画について、約10ヶ月にわたって審議、検討を重ねてまいりました。ここに、その検討結果がまとまりましたので、報告いたします。

古都鎌倉の観光拠点である鎌倉地域では、地域内や周辺都市で発生集中する自動車交通に加え、観光目的の自動車が流入するために、日祭日はもとより行楽シーズンの平日にも著しい交通混雑が生じています。このような交通問題を抜本的に解決するためには道路整備を推進していく必要があります。一方、鎌倉地域の道路網は中世の形態を踏襲したもので、歴史的環境の保全など様々な制約を抱えているために、短期間での道路整備は困難であり、このままでは、今の交通問題が長期間にわたり解決されないことになってしまいます。

このため、現在ある道路や駐車場等の交通施設の活用を基本にしながら、地域のこ鬱問題を改善していく方策を検討し、推進していく必要があります。また、このような方策は市民生活や商業振興にも大きく係わりを持つことから、その実現にあたっては、市民自らが計画づくりに参加し、市民が主体となって進めていくことが必要です。

以上の認識の基に、本研究会は市と市民、事業者、学識経験者及び関係行政機関より構成し、鎌倉地域の地区交通計画の基本的考え方、鎌倉地区交通市民宣言(案)、地区交通計画案について議論を深め、その検討結果を「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言」として取りまとめるに至ったものです。

この提言が鎌倉地域の地区交通計画における市民と行政の協働指針となり、地区交通計画の具体化が図られることにより鎌倉地域の交通問題が改善され、さらには鎌倉地区交通市民宣言(案)で掲げた精神が広く全国に及ぶことを願っています。

地区交通計画への基本的な取り組み

研究会では、鎌倉地域の交通の現状と課題を踏まえ、単に交通問題のみを対象とするのではなく、「鎌倉地域において安全で快適な歩行空間と居住環境を再生し、観光都市と住宅都市という相異なる性格を調和させる計画」を目指すことが議論されました。その結果、この計画づくりにおいては、次の3点を基本とし、取り組みを進めていくこととしました。

1:市民主体で取り組んでいく

この計画は、市民生活や商業振興などにも大きく係わりを持つことから、計画策定の当初の段階より、市民自らが計画づくりに参画し、その実現にあたっては、市民が主体となって市民と行政が協働で進めていく。

2:現在ある交通施設を基本として取り組んでいく

鎌倉地域は、古都としての歴史的環境の保全など様々な制約を抱えており、これまでの道路整備の経過などを考慮すると、道路整備による対処だけでは交通問題が長期間にわたり解決されないままとなる可能性が高い。
現在の交通問題は非常に深刻であり、緊急に解決していくことが求められていることから、現在ある道路や駐車場等の交通施設の活用を原則として考えられる方策に取り組んでいく。

3:実験を重ねながら計画の具体化に向けて取り組んでいく

この計画を具体化していくには、計画案の中から実施が可能と思われるものを取り上げて、実験を繰り返し行うことで市民や関係者の理解を深めつつ、さらに課題を抽出し改善を加えていく。

地区交通計画策定の基本的な考え方

1:計画の位置付け

計画策定にあたっては、問題解決の緊急性に鑑み、すぐにでも対応可能な方策を見出すこととしました。その際、鎌倉地域の歴史性・地形などの特性や、これまでの道路整備の進捗状況などを考慮し、計画づくりを行うこととしました。

2:計画目標

(1)自動車利用の抑制と公共交通の活用による安全で快適な地域づくり

現在の交通施設等を活用しながら、自動車利用を抑制するとともに、この代替えとしての公共交通サービス

の充実を図ることにより、鎌倉地域の交通問題を改善し、安全で快適な地域づくりを目指していきます。

また、自動車利用を抑制していくためには、地域の外からの自動車のみを対象とするのではなく、鎌倉市民

自らも自動車利用を自粛、またその対価を支払うことににより、その実現を図っていきます。

(2)歩行空間と居住観葉の再生による市民生活と観光が共生できるまちづくり

鎌倉市が目指す「歩く観光」を推進し、ハンディキャップのある人や高齢者などが安心して歩ける歩行空間の

充実を図るとともに、住宅地内への自動車交通の流入を抑制し、交通の静穏化を図ることにより、市民生活と

観光が共生できる街づくりを目指していきます。

(3)活力とにぎわいのある歩いて楽しい古都かまくらの観光地づくり

鎌倉市は全国でも有数の観光地であり、自動車利用を抑制することにより、その経済基盤が本質的に損な

われることがあってはなりません。

このため、鎌倉地域に訪れる人の総量を抑制するのではなく、使いやすい公共交通機関と安全で快適な歩

行空間の組み合わせにより、活力とにぎわいのある歩いて楽しい古都かまくらの観光地づくりを目指していき

ます。

3:鎌倉地区交通市民宣言(案)

前述の計画目標を実現するためには、市民自身のこれまでの自動車交通に関する考え方や利用の方法を根底から見直す必要があります。
そこで、本計画の精神を以下に「鎌倉地区交通市民宣言(案)」としてまとめ、表明することしました。

鎌倉地区交通市民宣言(案)

私たち鎌倉市民は、自らの自動車利用を自粛し、徒歩と公共交通を中心とする交通環境を創り、古都鎌倉の歴史的遺産や風土を生かした新しい街づくりを進めることを宣言します。

その実現に向けては、地区で働く人達や遠来の顧客とともに手を携えて進めます。
私たち鎌倉市民は、「歩いて楽しい街」、「静かできれない街」、「子供や高齢者にやさしい街」、「電車やバスが利用しやすい街」、「市民と遠来の顧客が共生しやすい街」をつくります。
私たち鎌倉市民は、この宣言が湘南地域へ、そして全国に広まることを願います。

平成○年○月

鎌倉市


注:この市民宣言(案)は、研究会からの提案であり、市民の総意として行政計画に位置付けられたものではありません。

地区交通計画案について

計画の基本としては、「自動車利用の抑制」を基盤に置き、その上で「公共交通への転換」と「歩行・居住環境の向上」を図るという考え方としました。

また、施策をより効果的に実施するには、歩く観光のPR、商業者や交通事業者等による各種サービスの実施などのプロモーション活動が重要であり、このプロモーション自体も施策として位置付けるものとしました。

さらに、各々の示唆Kを実現するにあたり、施策実現までのプロセスにおける相互理解や、施策そのものの評価を市民、そして対外的に伝えることが重要であり、施策と活動についての情報を継続的に提供・発信することにより、鎌倉地域地区交通計画の基本的な認識をつくり上げることが大きな目標となります。

これらの考え方を、施策の構造として示すと、下図のようになります。

画像:施策の構造

基本的な施策

施策のメニュー

歩行・居住環境の向上策

・歩行者尊重道路・ゾーンシステム(交通静穏化)

公共交通への転換方策

・パーク&レールライド・パーク&バスライド・シャトルバス(ミニバス)・バス専用レーン・バス追越し現示・乗り継ぎの利便化(周遊券等)・円滑な交通制御

自動車利用の抑制策

・ロードプライシング

鎌倉地域地区交通計画案

 

施策の内容

自動車交通の抑制策

1:鎌倉地域におけるロードプライシング

公共交通への転換方策

パーク&

ライド

2:江ノ電七里ガ浜でのパーク&(レール)ライド

パーク&

バスライド

3:海浜公園でのパーク&バスライド
4:深沢地域でのパーク&バスライド
5:鎌倉霊園でのパーク&バスライド

シャトルバス
(ミニバス)

6:海浜公園~鶴岡八幡宮間(3と対応)

7:大仏~材木座地域間(〃)

8:鎌倉霊園~鶴岡八幡宮(5と対応)

9:鎌倉市役所~湘南モノレール湘南深沢駅間(4と対応)

バス専用

レーン

10:鎌倉参道線でのバス専用レーン

バス追越し現示等

11:金沢鎌倉線でのバス優先策(バス追越し現示等)

乗り継ぎの利便化

12:バス乗り降り自由切符や周遊券、JR・江ノ電・

バス・タクシー相互を自由に乗り継げる割引周遊券の発行。

円滑な交通抑制

13:江ノ電踏切と連動した下馬交差点での信号制御

歩行・居住環境の向上策

歩行者尊重道路

14:今小路通りでの歩行者系道路整備

15:小町大路での歩行者系道路整備

16:海浜公園から周辺観光拠点間での歩行者系道路整備

17:江ノ電長谷駅前道路での歩行者系道路整備

地区通過

交通対策

18:由比ガ浜・長谷地区のゾーンシステム

総合的な交通情報

19:鎌倉地域における総合的な交通情報の提供

プロモーション

20:PRやキャンペーン等のソフト施策・情報発信

鎌倉地域地区交通計画案図はこちら(JPG:95KB)

 

おわりに

この提言のまとめにあたり、研究会からのメッセージをここに示します。 

 鎌倉地域交通計画研究会では、「鎌倉地域において安全で快適な歩行空間と居住環境を再生し、観光都市と住宅都市という相異なる性格を調和させる」ということを視点に置いて、大変熱心な議論を重ねてまいりました。

この計画の策定に着手するに際しては、委員の中からも「鎌倉市の交通問題を解決するためには、大規模なトンネルや駐車場の建設等、自動車交通需要に対応した施設整備を進めるべきではないか」といった意見も多く出されました。しかし、市民アンケートなどを通じて、現在の交通問題が非常に申告であり、早急な解決が求められていることが再認識され、実現可能な交通施策の取り組みを進めることとしました。

また、一般市民の意向を把握するために、2回にわたり実施されたアンケートの回収率は郵送にもかかわらず70%を超え、他に例を見ない関心の高さを示しました。

その結果を見ると、「車の乗り入れを制限すること」が約80%、自動車の乗り入れが規制された場合には「全ての自動車を公平に扱うべきである」を約70%の市民が支持しているなど、地域市民の意識の高さがうかがい知ることができ、この提言のまとめにあたって大きな足がかりとなりました。

本提言においては、この計画を「先導的な役割を果たすもの」として位置付け、具体的な計画目標を「自動車利用の抑制と公共交通の活用」、「歩行空間と居住環境の再生」、「活力とにぎわいのある古都鎌倉の観光地づくり」とし、単に交通問題の解決に留まることでなく、古都鎌倉のまちづくりに寄与することを目指すこととしました。そして、市民の意思を強く表明するために、「鎌倉地区交通市民宣言(案)」を提唱し、この宣言の精神が全国に広がることを期待したものです。

また、本計画を推進していくために、周辺の市町村や関係者との調整が不可欠であることから、行政間の「調整会議」の設置を提案し、この研究会の活動の継続とともに、市民と行政が協働して取り組みを進めていく必要があります。また、市民一人ひとりが先ず自ら日常生活を振り返り、自動車に偏重した住まい方を見直すことも強く認識した次第です。

今後、この提言をもとにして、市民と行政が一体となって鎌倉地域での地区交通計画の実現に向けて取り組みを推進し、全国に先駆けた新たな交通環境を備えたまちづくりが定着し、古都鎌倉の発展に寄与するとともに、さらにはその取り組みが日本全国そして世界に発信されていくことを願っています。

提言に関する資料

鎌倉地域の地区交通計画に関する提言(PDF:3,000KB)

20の施策一覧表(詳細版)(PDF:165KB)

 

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お問い合わせ

所属課室:まちづくり計画部都市計画課交通政策担当

鎌倉市御成町18-10 本庁舎3階

電話番号:0467-61-3658

メール:koutsu@city.kamakura.kanagawa.jp

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