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更新日:2023年1月30日

フェアトレードタウン鎌倉ゼロ次会 イベントレポート

立場の弱い生産者の労働環境などに配慮した取引である「フェアトレード」をまちぐるみで推進する「フェアトレードタウン」の認定を目指して、令和5年1月15日に安国論寺観音堂で「フェアトレードタウン鎌倉ゼロ次会」を開催しました。
SDGs未来都市であり、共生社会の実現を目指す鎌倉市が進める、フェアトレードタウン運動のはじめの一歩。参加者からは「タウンに向けたエネルギーと一体感を感じた。」「具体的なアクションを起こしていきたい。」などの前向きな感想をいただきました。
詳細は次のとおり。

ゼロ次会写真

日時:令和5年(2023年)1月15日(日曜日)14時30分~16時30分

会場:安国論寺観音堂

参加者:33名

パネルディスカッション「フェアトレードタウン鎌倉に向けて」

鎌倉にフェアトレードタウン運動を定着させるにはどうしたら良いのか。その基礎となる情報を共有するため、フェアトレードに関する知識経験を持っている方を招いてパネルディスカッションを行いました。コーディネートは、鎌倉市エシカル消費推進アドバイザーを務める末吉里花さんにお願いしました。

パネリスト

  • 一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム 理事   胤森なお子
  • ZZZ(逗子市のZ世代によるZEROエミッション計画)代表 磯野アサ
  • 鎌倉市共生共創部地域共生課 担当課長         矢作拓

コーディネーター

  • 鎌倉市エシカル消費推進アドバイザー/一般社団法人エシカル協会 代表理事 末吉里花

末吉
こんなにも多くの方に集まっていただけたなんて!感動的ですね。私自身も、皆さんとこの日を迎えられて、とても嬉しいです。こうした長い歴史を持つ安国論寺で、未来の話が出来ることは本当に素晴らしいことだと感じています。
パネルディスカッションでは、なぜ鎌倉市がフェアトレードタウンを目指すことになったのかを鎌倉市の矢作さんから、タウン認定の基準などを一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムの胤森さんから、逗子市のタウン運動の経験談などを磯野さんから伺いたいと思っています。

ゼロ次会写真1
鎌倉市エシカル消費推進アドバイザー 末吉里花さん

 

~なぜフェアトレードタウンを目指すのか~

末吉
まずは、なぜ鎌倉市がフェアトレードタウンを目指すのか、鎌倉市の方針や状況を伺いたいのですが。

矢作
改めまして地域共生課の矢作です。鎌倉市は国からSDGs未来都市として認定され、持続可能な社会を実現するためにエシカル消費の普及に取り組んでいます。
鎌倉市では、すべての人が、お互いを尊重し合い、支え合い、多様性を認め、誰もが自分らしく安心して暮らせる共生社会を目指しており、その考え方がエシカル消費や、フェアトレードタウンの考え方にもつながっています。日頃手にする商品を知らないうちに選ばされるのではなく、自分らしく選びたいものを選べる環境をフェアトレードタウン運動で実現したいと考えています。決してフェアトレード以外の商品を排除したいという思想ではありません。
フェアトレードタウンを目指す理由はシンプルで、エシカル消費やフェアトレードという言葉を知らなくても、そういった取組を求めている方、より良い鎌倉を次世代に残したいと思う方の思いに応えられるようにしたいからです。
行政だけで共生社会を実現することはできません。市民、企業と一体となり、まちぐるみで取り組んでいきたいと考えています。

ゼロ次会写真2
鎌倉市共生共創部地域共生課 矢作拓さん

末吉
共生社会というキーワードが出てきました。一人ひとりがフェアトレードの趣旨を理解して、製品を選べるようにする。まちぐるみで進めていかなくてはならない取組ですね。

~フェアトレードタウンとは~

末吉
私たちが目指すフェアトレードタウンについて、そもそもフェアトレードとはどういうものなのか、胤森さんからお話を伺いたいと思います。

胤森
私は、一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムで認定事務を担当しています。今なぜ、フェアトレードを広める必要があるかについて皆さんと共有させていただきます。途上国支援のための公正な取引であるフェアトレードは、人と地球のことを考えた取引と言えます。フェアトレードを推進することで、SDGsの17のゴールのうち、「貧困をなくそう」など多くのゴール達成に貢献することができます。SDGs未来都市である鎌倉市が、フェアトレードタウンを目指すのは自然なことだと感じます。

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一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム 胤森なお子さん

~タウン認定の基準~

胤森
日本におけるフェアトレードタウンの基準は、最初にタウン運動が始まったイギリスで作られた5つの基準に日本独自の基準を加えた以下の6つです。

  1. フェアトレードタウンを目指す多様な人たちで組織した推進組織(法人組織である必要はない)があること
  2. フェアトレードタウンを認知してもらうための活動(イベントなど)をすること
  3. 地元の企業や学校が、組織の中でフェアトレード商品を活用すること
  4. 地域の市民運動と連携して地域活性化に貢献すること(日本独自)
  5. フェアトレード産品を買えるお店があること(人口1万人あたり1店舗)
  6. 首長の宣言、議会の議決により自治体がフェアトレードを支持していること

日本独自の基準である基準4地域活性化については、少しわかりづらいかもしれないので、各地域で行われている連携事例をご紹介させていただきます。

  • フェアトレード産品×地元食材⇒オリジナルスイーツ開発
  • フェアトレード産品×地元店舗⇒フェアトレード月間にランチを提供
  • 推進組織×学生×教員    ⇒フェアトレードを題材とした漫画
  • フェアトレード産品×福祉団体⇒フェアトレード産品の販売

現在、タウン認定を目指して活動している地域がたくさんあります。多くの地域では、まず市民活動として推進組織が設立され、自治体の支持を得るのが最も大変と聞いています。鎌倉市では市長をはじめ行政職員の理解も十分にあり、積極的なサポートがあるので、基準6は達成できそうですから、基準1の推進組織が設立されればタウン認定は間近なのではないでしょうか!

~タウン運動の意義~

胤森
なぜ多くの人たちが自分たちのまちをフェアトレードタウンにしたいと思っているのでしょうか。タウン認定の基準を満たすには、市民、企業、自治体などのステークホルダーが、それぞれの役割を果たして力を合わせ一つの目標を目指す必要があります。地域が一体となるこの手法は、他の地域課題の解決にも応用することが出来ます。より暮らしやすく、市民力のある地域を構築できることがタウン運動の魅力なのではないでしょうか。他の自治体でタウン運動をしている人たちは、みんな楽しそうに誇りを持って活動に取り組んでいます。

末吉
ありがとうございます。立場の違うステークホルダーが一体となって行う取組は、まさに共生社会ですね!会場の皆さんも、自分が出来ることや取り組みたいことのイメージが思い浮かんできたのではないでしょうか?

~逗子市での取組~

末吉
お隣の逗子市は、2016年にフェアトレードタウンに認定されています。その認定までの道のりや実際の活動について、逗子のタウン運動に携わられていた磯野さんから、タウンの先輩としてお話いただけますか?

磯野
私は、大学一年生で、逗子市のZ世代でゼロエミッションを進める「ZZZ」の代表をしています。また、逗子の推進組織である「逗子市フェアトレードタウンの会」の共同代表を私の母が務めていて、私もタウン運動にかかわっています。逗子の推進組織では、フォーラムや、地元事業者と連携したランチのキャンペーン、連続講座、ユースのプログラムなどを行っています。私自身も中学3年生の時にユースのプログラムに参加して、フェアトレードについて学ぶとともに、逗子スマイルチョコの企画に携わりました。その企画が、実際に販売した福祉×フェアトレードの「ずしちょこ」につながっています。市内の店舗で販売されている「ZUSHI COFFEE」のパッケージデザインや、イベントでの販売も行いました。

ゼロ次会写真4
ZZZ(逗子市のZ世代によるZEROエミッション計画) 磯野アサさん

末吉
どれも魅力的な取組ですね。実際に取組を行う際に苦労されたことはありますか?

磯野
市が行っている認知度調査では、フェアトレードについて知っている人は60%程度で、逗子市がフェアトレードタウンであることを知っている人は30%程度に留まっているので、少し残念に思っています。また、店舗にフェアトレード商品を置いていただくように交渉する際も理解を得られないことがあると聞いています。

末吉
フェアトレードやタウンについて理解してもらうのがなかなか難しく、壁にもぶつかっているのですね。市民や店舗も限定的な認知に留まっているとのことですが、こうした課題は、おそらく鎌倉市も経験するものだと思います。

~私たちの心を持続可能に~

末吉
磯野さんは、環境問題にも取り組まれていますが、そうした経験も踏まえて、課題を突破するアイデアや、事業を継続していく工夫があれば、教えてください。

磯野
取組を継続していくうえで、「楽しい」という気持ちが大切だと思っています。環境問題や、社会問題はハードルが高くて、敬遠されがちですが、大きな課題ほど一人でも多くの方と一緒に取り組む必要があると思います。「ZUSHI COFFEE」のパッケージデザインをする際は、逗子マリーナなどの名所を採用したり、障がいのある女の子に描いてもらった砂絵をデザインしたりするなど、フェアトレードに関心のない方にも商品を手に取ってもらえるように「おしゃれ」や「かわいい」と感じてもらえることを意識しています。これはポイ捨ての課題解決ですが、ごみ箱の上にバスケットボールのゴールがあったら楽しくて、きちんとゴミ箱に捨ててもらえそうですよね!
また、持続可能な社会を目指しているのに、「私たちの心が持続可能でなくては意味がない」と思っています。義務感で固くなるのではなく、出来ることを継続することが大切だと思います。

末吉
ありがとうございます。ズシリと響く良い言葉をいただきました。私たちの心が持続可能であるためにも楽しさが必要ですね。胤森さんからも他のタウンも楽しそうに活動しているというお話がありましたが、会場の雰囲気を見ると鎌倉市もやって行けそうですね!
鎌倉市のタウン運動も、多様なメンバーで、多様な感性を取り入れながら進めていけたらと思います。

~鎌倉の強味を生かした活動~

末吉
タウン運動は、それぞれの地域のそれぞれの強味を生かすことが必要だと思います。タウン認定の基準には地域活性化への貢献も掲げられています。鎌倉市には色々な強味や得意分野があると思いますが、矢作さんいかがですか?

矢作
鶴岡八幡宮の裏山を市民活動で守った御谷騒動など、意識が高く熱量のある市民が多いと感じています。そうした市民の方は個人の豊かさと世界の豊かさが不可分であると理解しています。
また、本日も様々な分野で知識経験をお持ちの方にご参加いただいていますが、この多様な人財が鎌倉市の強味だと思っています。

末吉
そうですね!鎌倉市には様々な社会課題に取り組まれている方が多いと感じています。本日ご参加の皆さまにも、楽しく、気負わず、推進組織にご参加いただけたら嬉しいです!

参加者によるセッション

「タウン認定に向けてやりたいこと」

後半は、パネルディスカッションの内容を踏まえて、参加者自身が取り組みたいことを考え、同様の取組を行いたい者同士でグループを作って意見交換を行いました。グループワークのコーディネートは鎌倉市内でエシカル消費に関する店舗を運営する稲葉さん。「イベント」、「教育」、「商品開発」、「メディア」の分野で次のような意見が発表されました。

ゼロ次会写真5
えしかる屋 稲葉哲治さん

グループ1(イベント)

  • 鎌倉らしいフェアトレード商品の販売、ファッションショーを行うフェアトレードフェスを行い、認知を広めたい。(フェアトレード月間に出来ると良い)
  • 売上の一部をまちの景観保護に役立てるなど、市民に還元できると、より認知が進むと思う。

グループ2(イベント)

  • 生産者の状況や、フェアトレードの背景を知ることが大切だと思う。
  • 人と人、鎌倉と世界をつなげるイベントを開催したい。
  • 5月に逗子が行うイベントと同時にイベントを開催し、周遊できると良いと思う。

グループ3(教育)

  • フェアトレードの活動を行う担い手を生み出していきたい。
  • ゲーム、スタンプラリー、まちのコイン、スマホアプリを活用するなど、楽しく学べるようにしたい。
  • 市内の教育機関や、既存の市民団体とも連携したい。

グループ4(商品開発(お土産))

  • お土産物の材料にフェアトレード産品を使ってもらえるように働きかけたい。
  • 修学旅行で鎌倉を訪れる小中学生が、フェアトレードに関するフィールドワークを行えるマップを作成したい。
  • 鎌倉彫の体験や、飲食店など、観光を軸にしたコラボレーションをしたい。

グループ5(メディア)

  • 観光客の方に情報発信するため、フェアトレード商品を取り扱う店舗の情報と観光情報を合わせたマップの作成などを行いたい。

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閉会の言葉

参加者同士が思いを共有し、熱気あふれるゼロ次会となりました。会を振り返って安国論寺の平井住職から「法華経の教えの一つに「少欲知足」という言葉があります。自らの欲を節制して必要な分で満足し、人と譲り合い、共に生きることが大切です。」とのお言葉をいただきました。さらに、「鎌倉は源頼朝が史上初の武家政権を確立した場所です。様々な理由があったと思いますが、革新的な制度を受け入れる土壌があったからだと考えています。このまちから共生共栄のまちの一環としてフェアトレードタウンを目指すことは素晴らしいことです。皆さんが鎌倉から世界を変える気概を持ってタウン運動に取り組まれることを期待しています。」とのお言葉をいただき閉会しました。

ゼロ次会写真8
安国論寺 平井住職

 

お問い合わせ

所属課室:共生共創部地域共生課消費生活担当

鎌倉市御成町18-10 本庁舎1階

電話番号:0467-23-3000

メール:seikatu@city.kamakura.kanagawa.jp

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