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更新日:2025年1月30日
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令和6年(2024年)11月21日に建長寺応真閣で「エシカルセッション2024」(東京都、神奈川県、鎌倉エシカルラボ及び鎌倉市の共催事業)を開催しました。
当日は、実際にエシカルな商品・サービスを提供する企業エピソードをもとに、エシカル消費を消費者の日常に浸透させるための意見交換を行いました。
企業の枠を越え、想いとアイデアをつなげて明日を変えよう!
詳細は次のとおり。
末吉
岩渕
三本珈琲株式会社で品質管理と開発、フェアトレード等の認証の窓口業務に携わっている岩渕です。
弊社では、企業理念として「ちょっとした幸せを世界中の人に届ける」を掲げ、食品ロスになってしまうコーヒー豆で作った製品や、飢餓で苦しむ子どもたちの学校給食支援につながるWFP(国連世界食糧計画)のレッドカップキャンペーンに賛同したエシカルな製品を製造しています。
本日は、鎌倉市のフェアトレードタウン認定を目指している推進組織「鎌倉エシカルラボ」との連携によって誕生した、鎌倉発のフェアトレードコーヒーの話を中心にお話させていただきます。
善積
株式会社カマンでリユース可能な容器のシェアリングサービス「Megloo」を運営している善積です。
年間約800万トンのプラスチックが廃棄されていますが、そのうちの約半分を容器包装プラスチックが占め、さらにその4分の1を弁当容器・カップが占めています。コロナ禍において、テイクアウトやデリバリーが多く利用されましたが、自社で行ったアンケートの結果、そのゴミを見て罪の意識を感じるという人は8割を超えていました。焼却時に排出されるCO2や、海洋プラスチックの問題を解決したいと思い、3年前からサービスを開始しています。現在は、イベントで活用していただくことも多く、全国20都市で展開しています。
丸川
「アイカサ」という傘のシェアリングサービスを運営している株式会社Nature Innovation Groupの丸川です。元々は児童福祉の分野から、NPOやソーシャルビジネスに興味を持ち、「使い捨て傘ゼロへ」、「雨の日を快適ハッピーに」をミッションに掲げ、現在のサービスをスタートさせました。使い捨てではなく、一つの傘を5年間使い続けることができるので、使う資源やコストを抑えることが可能です。
日本では、年間約8,000万本のビニール傘が消費されていて、傘の輸入量も1億本を超えています。また、一雨降った際に消費されるビニール傘の本数は、1都3県で約15万本です。この現状は改善の余地があるものと捉え、いずれは完全に代替したいと考えています。
末吉
パネリストの皆様からご紹介いただいた取組が、消費者にどのように届いて、感じられているのか実感をお話いただけますか。
棚橋
2019年から、東急グループ等が共同運行しているSDGsトレインに掲載している車内広告では、「つめかえてくれたあなたに、ありがとう。」、「つづけてくれて、ありがとう。」などのフレーズを使用しています。消費者が詰替え商品を購入し、詰替えを行うことで、プラスチック使用量を78%削減することができます。その行動に対して感謝を発信したところ、「詰替えが環境にいいこととは思っていなかった。」「ありがとうと言われて嬉しかった。これからも詰替えようと思う。」という反響がありました。普段の行動がエシカルであることに気付いてもらい、企業と消費者で一緒に取り組もうというメッセージを発信することが大切だと感じています。
末吉
消費者が手にした商品や利用したサービスが、どんな社会課題の解決につながっているのか気付いてもらえるように、可視化することが重要ですね。また、ポジティブなメッセージを発信することで、潜在的なエシカル消費に対するニーズを発掘できるのではないでしょうか。
三本珈琲では、フェアトレードをはじめ、様々なエシカル商品を製造されていますが、エシカルであることを基準に商品を選択している消費者はいるのでしょうか。
岩渕
認証ラベルが付いているだけでは、中々選択していただけないと感じています。この価値をしっかりと消費者に伝えるには、商品に携わる小売店、問屋、メーカー等が理解して、意識を共有することが大切です。
鎌倉焙煎珈琲フェアトレードかまくらブレンドは、地元の市民団体や問屋とも連携し、フェアトレードを広めることを目的として商品開発したことで、消費者からの理解も得られています。
末吉
ありがとうございます。企業内での意識共有はもちろん、関連する企業や団体での連携も重要ですね。後ほど連携についてお話を伺えたらと思います。
続いて、善積さんにお伺いしますが、「Megloo」を利用したい消費者は増えているのでしょうか。
善積
全体としてはまだ少ないですが、事業を開始した4年前と比べて増えています。エシカル消費やサーキュラーエコノミーなどの普及によって、消費者の理解が進んでいることが要因だと思います。
また、当初は意識の高い人しか利用してくれないという課題がありましたが、イベントで使用する食器を全てリユースに置き換えることで、消費者の意識とは関係なく、普通に使ったらリユースだったという環境作りも功を奏したと感じています。
エシカル消費を普及させていくためには、仕組みを変えなくてはならないと感じています。日常でエシカル消費を体感し、その良さを感じて自ら選択するようになる循環が生まれたら良いと思います。
末吉
自然とエシカル消費を選択するきっかけと、それが継続する仕組み作りがポイントですね。同じくサービスを提供する丸川さんですが、今のお話を受けていかがでしょうか。
丸川
会員数が65万人位まで成長してきています。日本国内で傘を購入している人は数千万人規模かと思っていますが、ターゲットとしている電車移動している首都圏のシェアで言うと3%~5%を占めていると捉えています。シェアを広げるに当たって大切なのは、消費者との接点であるスポット数の多さです。今後、10倍に広げていきたいと考えています。
利用のきっかけは、便利さだったり、価格だったりすると思いますが、リピーターの方に利用する理由を尋ねると、環境負荷が少ないサービスを利用することに誇りを感じているという方もいらっしゃいます。LTV(Life Time Value)にもつながるものだと思っています。
消費者の新しい選択基準としてエシカルの割合が増えているこのタイミングで、どれだけそれを強みとした事業を進められるかが企業の課題だと思います。
末吉
消費者が誇りに感じられる、消費者から共感を得られる感覚ってとても大切だと思いました。
本日のイベントは、東京都も共催していますが、先日東京都が発表したエシカル消費に関する調査結果の中で、興味を持つための情報として何が必要かという問いに対して、約6割の方が、何に貢献できているのかわかることを挙げています。消費者の誇りにつながる要素が商品・サービスに組み込まれていることが大切だと感じました。
末吉
消費者が商品やサービスを選択する際の基準として「便利さ」や、「続けやすさ」等がありますが、「エシカル」という基準はどのように捉えられていると感じていますか。
棚橋
様々な意識調査において6、7割の方が、環境に良い商品、エシカルな商品を購入したいと回答していますが、少し高額でも購入するかと問われると割合が下がってしまいます。消費者は、まず商品の機能価値に惹かれて、使用して気分が高揚するなどの情緒価値、最後に社会価値を感じると思います。15秒のCMでエシカルの要素を伝えることはとても難しいので、WEBやSNSで社会的な価値を伝える工夫をしています。
消費者の意識も時代によって変わってきていて、SDGsが定着してきた近年では、自分の行動がSDGsに貢献していることを納得して選択をしている傾向にあります。消費者の選択がエシカルであると気付き、納得を得るきっかけになるようなメッセージを発信するように心がけています。
末吉
まずは機能価値を発信して興味を持ってもらい、そこからHP等で商品の社会的価値を知ってもらうという情報発信ですね。
一企業だけで社会的価値を発信していくことは難しいと思います。そこで、様々な連携が必要だと思いますが、連携の工夫などあれば、岩渕さんから伺いたいのですが。
岩渕
私が心がけているのは、無理をしないということです。当社であれば、工場のある鎌倉での仲間づくりを心掛けました。コーヒー豆が入っている麻袋をアップサイクルする際も、やり取りがスムーズでした。
また、先日発売された鎌倉発のフェアトレードコーヒーは、以前から取引のあった食品卸会社との連携で実現したものです。食品卸会社との連携を密にすることで、ただ小売店に商品を流すだけではなく、商品に込めた思いも一緒に小売りの現場に届けることができたと感じています。
末吉
同じ地域で活動している者同士であれば、連携もスムーズですね。また、サプライチェーンが連携することが、より多くの消費者に思いを届けるカギなのかと感じました。
善積さん、丸川さんは、新たなサービスを立ち上げて、多くの利用者を獲得してきましたが、より多くの消費者の生活にエシカル消費を浸透させるための、次なる打ち手があれば教えてください。
善積
先ほど話をしたイベントごとリユースに切り替えるという話ともつながるのですが、今月末からJリーグのクラブチームで導入していただくことになっています。年間20試合で導入することで、大きなインパクトがあります。
一方で、リユースに切り替えると約2倍のコストがかかるというデメリットもあります。当初は、そのコストをどのように解消するか悩みましたが、環境や社会への貢献などESGに積極的なスポンサーを獲得することで解決させる見込みです。サステナビリティと経済を両立させるアイデアが飛躍のカギだと感じています。
末吉
良質なサービスへの出資は、スポンサーにとってもメリットがありますね。また、スポーツのクラブチームは様々な地域に展開しているので、広がりを期待できますね。
最後に丸川さんいかがでしょうか。
丸川
利便性を感じていただくことが、アイカサ利用のきっかけになっていると思っています。皆さんのお話を聞いていて、利用者とコミュニケーションをとって、エシカルのメッセージを伝えることが必要だと感じました。
より多くの消費者にエシカル消費を定着させていくためには、一つの成功事例をロールモデルとして、それに賛同する様々な企業が連携して取組を行うことで、広くメッセージを伝えて共感を得ることができるのではないかと思います。
グループワークでは、活発な意見交換がなされました。