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更新日:2022年10月12日

糖尿病性腎症と鎌倉市の取り組み

全国の糖尿病の患者数は、推計約2,000万人(疑いも含む)に上り、腎症などの合併症を発症する方が年々増えています。鎌倉市の糖尿病対策にご尽力いただいている、高井内科クリニック 高井昌彦先生からのメッセージです。

高井内科クリニック 高井昌彦先生からのメッセージ

悪化した糖尿病を放置しておくと失明や血液透析になることがあることは聞いたことがあるとおもいます。

事実、我が国の血液透析の年間新規導入数は4万人あまりでその原因疾患のトップは糖尿病性腎症で、全体の42%におよびます。つまり年間1万6千人あまりの糖尿病患者が透析導入されています。

透析導入になると週3回程度4時間の透析を受けることになり生活は大きく制限をうけます。ではどんな要因が糖尿病性腎症を起こすことになり、また悪化させるのでしょう。

もちろん一番大事なのは血糖コントロールであります。

HbA1c7%未満であればその出現はゼロに近づきます。9から10%であれば8,9年続くとほぼ必ず出現するといわれています。

もちろん、直ぐに透析になるわけではなく、尿に微量の蛋白であるアルブミンが増えてきます。さらに悪化すると尿に蛋白が大量に出てネフローゼ症候群となり、浮腫が出現し腎機能が急速に悪化します。さらに進行すると尿毒症を呈して透析が必要になります。

しかしこの十年あまり尿のアルブミン、蛋白が出てこないか、出ても少量なのに腎機能が徐々に悪化する症例がふえています。

その原因は正確にはわかりませんが血糖コントロールが以前に比べ良くなっていること。また血圧のコントロールが良くなり、降圧剤もARB,やACE阻害剤などの糖尿病性腎症に良いとされるものが使用されるようになったこと。またその結果かもしれませんが患者の高齢化がみられて動脈硬化の影響が強くなっています。

すでに出現した糖尿病性腎症の悪化要因の一番は血糖コントロール悪化ではなく高血圧であります。

最高血圧は130mmHg以下に抑える必要があります。先に述べたようにARB,やACE阻害剤が使用される必要があります。

血圧のコントロールは薬剤治療と同時に塩分制限が必要です。一日当たり食塩6グラム以下の制限とされています。ちなみに日本人の一日食塩摂取量は平均12グラムです。

あと喫煙も腎症の悪化要因とされています。

高脂血症、高尿酸血症も悪化要因となっています。

糖尿病性腎症が進行して腎機能が悪化してくると蛋白制限が必要になってきます。蛋白制限は容易ではなく、肉や魚などが制限されたさみしい(美味しくない)食事になります。低蛋白米など利用して献立を立てる必要があります。また高K血症が出現しK制限食が必要になります。そうなると管理栄養士からの指導が必要です。

薬物療法ではこの数年、糖尿病薬のSGLT2阻害剤が糖尿病性腎症に対して有効であることが確立されました。

尿中のアルブミンを減らし腎機能の悪化を少なくします。もちろん血糖値を下げ、また血圧を少し下げて浮腫も改善します。

糖尿病性腎症であれば投薬が推奨されています。またGLP1製剤の注射は糖尿病性腎症にある程度有効なことが知られています。

つまり、必要な食事療法や生活指導薬物療法を受ければ糖尿病性腎症の悪化を防ぐ、少なくとも進行を遅らせることができます。患者さんが高齢者であれば透析になる前に天寿をまっとうすることができます。

あなたが糖尿病であるならばご自身の腎機能が悪化していないか尿蛋白が出現していないかまたは尿中のアルブミンが増えていないかチェックしてみましょう。

かかりつけ医のところでは一般に管理栄養士による指導ができるところは極少数であります。それは栄養指導料の保険点数が低く採算があわず、またプライバシーの問題で個室などのブースを確保することが難しいためです。

鎌倉市と医師会では糖尿病性腎症の重症化(透析)予防の事業をすすめています。

対象は国民健康保険と後期高齢者のかたです。(社会保険のかたは対象外)

対象となる患者さんを主治医のかかりつけ医が患者さんの同意を得て医師会に登録すると、無料でベテランの管理栄養士のいる病院や専門クリニックで栄養指導を3回うけることができます。

原則そこでの医師による診察はありません。また専門医のほうからかかりつけ医へ必要なアドバイスをおくります。そして対象となった患者さんの経過を観察します。

指導を受けた患者さんのおおくは食事療法や生活習慣が改善されてきています。

先に述べたように糖尿病性腎症の重症化による血液透析導入は減らすことができます。

まずはご自身のデータをチェックして主治医と相談しましょう。

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部市民健康課保健活動担当

鎌倉市御成町18-10 本庁舎1階

電話番号:0467-61-3977・0467-61-3944

メール:shikenko@city.kamakura.kanagawa.jp

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